東京高等裁判所 平成10年(行ケ)10号 判決 1998年9月29日
大阪市東淀川区下新庄1丁目7番22号
原告
平沼良作
東京都千代田区霞が関3丁目4番3号
被告
特許庁長官 伊佐山建志
同審査長
桜井氏
同審査官
菅澤氏
同審判長
横田芳信
外2名
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 本件訴えに係る請求の趣旨の記載は、「一 被告は、原告に対し、拒絶審査及び審判請求に対し矛盾しすぎる点は納得はできない由 二 訴訟費用は被告の負担とする。との判決及び仮執行の宣言を求める。」というものであるところ、本件記録によれば、原告は、発明の名称を「抵抗風圧力発電機装置」とする発明(以下「本願発明」という。)についてされた特許出願(平成4年特許願第137516号)の拒絶査定に対する審判事件(平成8年審判第2202号事件)について、特許庁が平成9年10月27日にした「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決(以下「本件審決」という。)の取消を求めるものと解される。
2 本件記録によれば、本件審決書の謄本は、平成9年12月12日に原告に送達されたこと、原告は、本件訴状を郵便により平成10年1月12日に提出したが、同訴状が当裁判所に到達したのは同月14日であることが認められる。そして、訴状は、裁判所に到達して初めて訴えの提起の効果が生じるものであるから(民事訴訟法133条1項)、本件訴えが当庁に提起されたのは、平成10年1月14日というべきである。そうすると、本件訴えは、審決の謄本の送達があった日から30日を経過した後に提起されたものであって、不適法でその不備を補正することができないから(特許法178条3項)、口頭弁論を経ないで却下すべきものである。
3 本件記録によれば、本件審決は、本願発明に係る特許出願の共同出願人である原告と訴外尹東游(代理人原告)が共同でした審判の請求について、原告と訴外尹東游の両名に対してされたものであることが認められる。そうすると、本件審決の取り消しを求める訴えは、原告と訴外尹東游の両名が提起することを要する必要的共同訴訟であるところ、本件訴えは、原告が単独で本件審決の取消を求めるものであるから、この点でも不適法である。そして、本件審決書の謄本が訴外尹東游の代理人である原告に送達されたのは平成9年12月12日であるから、訴外尹東游も、既に出訴期間を徒過しているため、その不備を補正することができない(最高裁判所昭和36年8月31日第一小法廷判決・民集15巻7号2040頁参照)。したがって、本件訴えは、この点においても、口頭弁論を経ずに却下すべきものである。
4 なお、審決に対する訴えは、特許庁長官を被告としなければならないから、特許庁長官を除くその余の被告に対する訴えは、この点でも不適法でその不備を補正することができない。また、審査長桜井氏及び審査官菅澤氏に対する訴えを、前記拒絶査定の取消を求めるものと解するとしても、そのような訴えは、提起することができないから(特許法178条6項)、不適法でその不備を補正することができないものである。
5 よって、本件訴えは、不適法でその不備を補正することができないから、口頭弁論を経ないで、判決で、これを却下することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)